ども、杉野です。

結構ご無沙汰しておりましたが、また気が向いたのでこのコーナーも
久々に更新していこうかと思います。

今回の批評するのはテレビ番組でも大活躍中の池上彰氏の著書です。

彼が昔担当していた「こどもニュース」には、中学生の頃にお世話に
なりました。

今では何を世話になったのかすらサッパリ覚えていませんが(笑)、
よくできた番組だったことだけはよく覚えています。

 

さて、そんな彼の書いた『学び続ける力』ですが、内容的には
あまりいいとは言えないものの、理念は素晴らしいと思います。

それは本書に書かれている

大学とは、自分で学ぶことを学ぶ場所

という言葉や

教養をもつとは、よりよく生きることではないか

という言葉に明確に表れていて、この言葉を見ただけでも彼がまともな
(周りのことをよく考えている)人間であることがよく分かります。

彼の生徒に対する姿勢(彼は大学で教鞭をとっています)、学びの態度、
そして理念。

それらはすべて「人として在るべき姿」を目指すものです。

その理念において、本書は巷のビジネス本に比べて頭が5つぐらい、
いや、そんなものとは比べられないぐらい抜き出ていると言って
いいでしょう。

 

この本は読んで勉強になる類の本でもなければ、何かノウハウが
身につくタイプのものではありません。

ノートの取り方やプレゼン能力の話など、多少はそういった話も
出てきますが、彼が本当に伝えたいのは恐らく

「学ぶことを楽しめ」

「もっと貪欲に学べ」

ということだけだと思います。

少なくとも僕にはそうとしか読めませんでした。

タイトルが『学び続ける力』となっていることからも分かるように、
彼の頭は「学ぶこと」でいっぱいです。

それは行間からもよく伝わってきます。

お金のない学生時代に、岩波文庫の値段の安い本から順々に買って
読んでいこうとしていた、というエピソードが紹介されていますが、
彼はそういう愛すべき勉強バカなのです。

 

上記を踏まえると、本書は内容を読む本ではないということが
よく分かります。

書かれていること自体は、どうだっていい。

重要なのは彼の思いを、理念を、汲み取ることです。

それができない人は、この本を読んでもまったく意味はありません。

ましてや何か「使える内容」を期待して読むなど言語道断です。

ミーハーな気持ちで読むこと自体は決して悪いことではないですが、
本書を読んでそのミーハーな気持ちを反省しなかったならば、
彼の思いは伝わらなかったということです。

読むだけ無駄だったということです。

この書評を読んだ以上、その点は心得ておいてください。

 

今回は僕にしては珍しく褒めるタイプの書評になりました。

「内容はダメ」と言っているにもかかわらず、個人的な評価としては
かなり高いです。

気持ちのこもった文章というのは、内容や体裁を凌駕します。

内容として学ぶべきことがなくても、伝わってくるものがある。

そういったものを感じられるようになれば「運命の本」に出会える日も
近いかもしれません。