【第46号】あなたの思考が現実化しない3つの理由

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僕は以前、『実存の部屋』の方で

「なぜあなたの思考は現実化しないのか」

という記事を書いたことがあります。

読んでもらえれば分かるように、ここで僕は「思考」の定義を
話していて、無意識的思考が「思考」のことだと言っています。

これは今でも間違いではないと思っていますが、いかんせん
この記事は何年も前のものなので、今の僕から見るとどうしても
説明の粗さが目立つんですよね。

というワケで今回は、この記事をリニューアルして、
2016年バージョンの記事を書いてみたいと思います。

 

まずは「思考は現実化する」の「思考」の定義です。

これは無意識的思考のことで間違いありませんが、
より厳密に言うと、「思考」とは無意識的思考の深い部分、
われわれの思考そのものを支えている前提のことです。

例えば「お金がほしい」ということを願ったり考えたり
することは、「自分にはお金がない」ということが前提に
なっていますよね?

われわれは自分にはお金がないと「思っている」から、
お金がほしいと願うワケです。

今「思っている」にカッコをつけたことからも分かるように、
この「思っている」が現実化している「思考」です。

だから意識的思考でお金がほしいと思い続けているかぎり、
その前提であるお金がないという前提が現実化され続けます。

一般化すると、何かを欲することは、その「何か」が自分に
無いということを前提としているため、その何かが無い
という前提(無意識的思考)が現実化しているということです。

この「思考=前提」という定義を理解していないことが、
思考が現実化しない1つ目の理由です。

 

次に「現実化」の定義も確認しておきます。

これはもう以前話した通りで、今われわれが見ている現実が、
われわれの「思考」が現実化した現実だということです。

つまり思考の現実化は、今この瞬間も起こり続けています。

そういえば以前見たヤフー知恵袋で「何度やっても思考が
現実化しません、どうすれば思考は現実化するんですか?」
というような質問があって、そこに面白い回答がありました。

「なにを言ってるんですか、何度やっても思考が現実化しない、
ってことが現実化してるじゃないですか」

まさにその通りなんですよ。

この質問者は「思考」の定義を誤解しているから上記のような
質問をしてしまうのであって、われわれの現実はいつでも、
われわれの「思考」、つまり前提を表しているのです。

この質問者の例で言えば、彼は思考を現実化させたい
ワケですから、「自分は今、思考を現実化できていない」
ということが前提になっています。

できていないという前提がなければ、それをできるように
しようとは思わないですよね?

だからその「できていない」という思考(前提)が
現実化している、というだけなのです。

この「現実化=今この瞬間に起こっていること」という定義を
理解していないことが、思考が現実化しない2つ目の理由と
言えるでしょう。

 

最後は方法ですね。

じゃあどうやったら「思考」、つまり前提を変えられるのか。

これを知らないことが思考が現実化しない3つ目の理由です。

でもやることはめちゃシンプルで、前提を自覚するだけ、
なんですよ。

例えばスーパーへ買い物に行った際、ほとんど人は値段で
商品を選ぶと思います。

今日はキャベツが安いから買っておこう、鶏肉が特価だから
買っておこう・・・という感じで買うことが多いと思いますが、
その「安いから買っておこう」は「自分は貧乏だ」
ということが前提になっていることに気付いているでしょうか?

もし「自分は金持ちだ」という前提で買い物をしているならば、
安さではなく本当に欲しいものを買おうとするはずです。

少なくとも「お買い得だから買っておこう」という発想には
ならないでしょう。

だって、お買い得だろうがそうじゃなかろうが、お金持ちなら
欲しいものを買うし、欲しくないものは買わないんだから。

別に安いものを買うことが悪いワケじゃないですが、
そうやって値段で選ぶことは「自分は貧乏だ」
ということを前提にした行動ですから、いつまで経っても
その「自分は貧乏だ」が現実化され続けます。

これを日常のあらゆる場面で自覚するということです。

もちろん簡単ではありませんが、簡単じゃないからこそ、
ほとんどの人ができないからこそ、自分が現実化したい思考を
思考できることに価値があるのです。

 

まとめておくと

1.「思考」の定義を誤解している
2.「現実化」の定義を誤解している
3.思考を現実化させる方法を知らない
(もしくは知っていても実行できない)

というのが、思考が現実化しない3つの理由です。

サラッと話しましたが、実は政治や経済、哲学、芸術、宗教など、
そういった深いことを学ぶべき理由は3の方法に関わっています。

もう1つのメルマガで少し前に話した例を出しておくと、

「時間は過去・現在・未来へと流れている」

という深い深い前提が現実化したのが、今われわれに
見えている世界です(実は中世までの人たちはこんな風には
時間を捉えていませんでした)。

さすがにこれ以上は突っ込まないでおきますが、買い物のような
小さな前提から、世界の見え方という大きな前提まで、すべては
同じ理屈で説明できます。

恐らくこっちメルマガしか読んでいない人は哲学や宗教には
興味がないだろうし、それらを学ぶことは遠回りにしか思えないと
思いますが、僕の個人的な実感としては、そっちから回った方が
思考を現実化させられる「精度」は確実に上がります。

要するに、自分の前提を自覚しやすくなる、ということです。

そんなワケで、しんどいことを避けたくなる気持ちは
分かりますが、結局しんどい修行をしないと前提を
自覚するための力は鍛えられないので、難しいことには
積極的にチャレンジするようにしてくださいませ。

ではでは。

ありがとうございました。

 

【動画】『「思考は現実化する」徹底解剖』のお知らせ

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ども、杉野です。

『「思考は現実化する」徹底解剖』という動画シリーズを
ユーチューブにアップしました。

よかったら見て(聞いて)みてくださいませ。
(オススメを貼っておきます)

見る側にとってはどうでもいい情報かもしれませんが、
この50本の動画は3日で録りました。

1日平均16本。

人間やればできるもんです(笑)

一気に全部を聞いても多分頭に残らないと思いますので、
1日数本ぐらいを目安に通勤時間にでも聞いてもらえればと
思います。

ではでは。

ありがとうございました。

 

【第26号】思い込みは現実化する

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ども、杉野です。

台風11号の被害が最小限で済むことを祈りつつ
26回目のここヒル配信です。

 

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第26号 思い込みは現実化する

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ナポレオン・ヒルの書いた有名な本に『思考は現実化する』
というものがあります。

この本については巷のブログでもよく取り上げられていて、
僕が見たかぎりほとんどの人は「ホントに思考は現実化するん
ですよ!」的なことを言っています。

みんなそれぞれに実体験を根拠にして「私はこうやって思考を
現実化させました」と言っている。

別に今はこのことをとやかく言うつもりはありません。

本人がそうだと言うのだから、恐らくそうなのでしょう。

僕がここで考えたいのは、そういう個人的な体験を根拠にした
主観的なものではなく、もっと万人の役に立つ客観的なもの、
つまり思考が現実化する「原理」です。

なぜ思考は現実化するのか。

どういう理屈で、何がどうなることで思考は現実化するのか。

それを今回は考えてみたいと思います。

 

最初に考えたいのは、「現実化する思考」とはどのような思考か、
ということです。

当たり前ですが、すべての思考が現実化したら世界は大変なことに
なってしまいます。

例えば誰かと喧嘩したときに「あんなヤツ、死ねばいいのに」と
一瞬だけ思ったことが現実化したら、かなりヤバイですよね?

でも、そんなことはまず起こりません。

われわれの思考は基本的に「現実化しない思考」だからです。

では「現実化する思考」とは何なのか。

一般にそれは、繰り返し強く思ったこと、とされます。

何度も何度も「自分は成功できる、自分は成功できる・・・」と
刷りこむことによって強く思考できるようになり、やがてそれが
現実化する、という具合です。

要するに、そこで言われているのは、弱い思考は現実化しないけど、
強い思考は現実化するということです。

では思考の強さとは何なのでしょう?

われわれが「1+1=2」という思考をする場合、そこにおける
思考の強さは、1+1=2の度合い、です。

厳密に言えば、1+1=2だと思い込んでいる度合い、です。

1+1=2自体には是非があるだけであって、強いや弱いという
度合いはありません。

今は10%ぐらい1+1=2なんだけど、なんとかがんばって
50%ぐらい1+1=2にしてほしい、みたいな会話はあり得ない
ですよね?

そういうことです。

同様にして、「自分は成功できる」という思考をする場合も、
そこにおける思考の強さは、そう思い込んでいる度合いを
意味します。

つまり思考の強さとは、思い込みの強さであり、思い込みの強い
思考は現実化するということなのです。

 

ここでまた疑問が湧きます。

なぜ思い込みの弱い思考は現実化せず、思い込みの強い思考は
現実化するのでしょうか?

今考えたことから導けるのは、思い込みの強さが現実に影響を
与えているということです。

だとすれば、思い込みと現実の間には何らかの関係があります。

ところで、現実とは何でしょうか?

例えば僕の目の前にはパソコンがありますが、このパソコンが
存在することは僕の現実です。

けれども、もしかしたら、それは僕が勝手にそう「思い込んでいる」
だけかもしれません。

なぜなら、われわれには何かが存在することを証明することは
できないからです。

僕は目の前にパソコンが見えている気がしているだけかも
しれないし、パソコンを触っている気になっているだけかも
しれない。

自分の感覚は絶対にウソをつかないと、どうして断言することが
できるでしょう。

万人がパソコンの存在を認めたとしても、万人の感覚が誤っている
可能性は消えません。

『シックスセンス』ではありませんが、本当は死んでるのに、
生きているつもりになっている、という可能性もあります。

だとすれば、現実とは、われわれがそう思い込んでいるものに
過ぎないのではないでしょうか。

自分の感覚を正しいと思い込み、その感覚が知覚したパソコンは
存在すると思い込み、自分はそれを正しく捉えていると思い込む。

そう、現実とは、われわれの思い込みそのものなのです。

 

ここまでくれば、なぜ思い込みの強い思考が現実化するのかは、
誰でも分かると思います。

それは

思い込むこと=現実化すること

だからです。

ただここで注意しておきたいのは、実は思い込みには
度合いなんてない、ということです。

思い込んでいるか否か、思い込みにはそれしかありません。

99%の思い込みは、思い込んでいないのと同じです。

だって「思い込む」という言葉の定義が、100%そう思っている、
一切疑いを挟まない、という意味なんだから。

その意味で、ちょっとだけ思い込む、は語義矛盾です。

50%満杯みたいな。

満杯なのか、50%なのか、どっちやねん、と。

そんな感じです。

思い込んでいるか否かが、それが現実化するか否かを決めているのです。

 

今回のタイトルは『思い込みは現実化する』としました。

この間に入っている「は」という助詞は、『思考は現実化する』の
「は」と同じ意味で使っています。

多くの人は、この「は」を勝手に解釈して「思考することによって
現実化する」と思い込んでいますが、この「は」は因果関係ではなく、
順接の「は」です。

どういうことかというと、「思考は現実化する」の正しい解釈は
思考=現実化する、だということです。

思考する「から」現実化するのではなく、思考「は」現実化するのです。

思考「即」現実化、と言い換えてもいいでしょう。

この思考は思い込みのことですから、思い込み「即」現実化です。

それが『思考は現実化する』『思い込みは現実化する』の正しい
解釈であり、意味なのです。

 

あなたの現実は、あなたの思い込みが作っています。

あなたにとって今の現実が望ましくないものならば、
それはあなたが望ましくないことを「そういうものだ」と
思い込んでいるということです。

人生なんてちっぽけなものだ。

俺の人生なんて所詮はこんなものだ。

そう思い込んでいるかぎり、その思い込みはそのまま現実化します。

現実化は今この瞬間にも起こっています。

焦る必要はありませんが、そのことをいつでも自覚するようにして
ください。

思い込みを変えるには、思い込みを知らなければならないのです。

ありがとうございました。

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【第22号】成功の代償

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ども、杉野です。

やっとこさ個人配信メルマガの準備ができました。

ということで、今回をもって『まぐまぐ』からのメルマガ配信を
最後とさせて頂きたいと思います。

最近登録された方には申し訳ないですが、もし引き続きメルマガを
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第22号 成功の代償

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「実現したいと望むものを得る代わりに、何を差し出すのかを
決めること」

「この世界には代償を必要としない報酬など存在しない」

先日たまたまナポレオン・ヒルプログラムのページを見てみたら、
こんな言葉が載っていました。

世の中に成功を謳う本はたくさんありますが、この言葉のように
堂々と成功のマイナス面に触れているものには滅多に出合いません。

どの本も「成功すればこんなに素晴らしい人生になりますよ」と
謳うばかりで、その代償として差し出さなければならないものが
どれほど大きいか、それを差し出すのにどれほどの勇気が必要か、
そういったことは(恐らく意図的に)無視されています。

例えば大金持ちになることが成功だとしましょう。

大金持ちになるとは、大金持ちの生活をするということであり、
それは言い換えれば今の平凡な生活を手放すということです。

普通、多くの人は大金持ちの生活を手に入れたあとで
今の平凡な生活を手放せばいいと思っているワケですが、
それが成功できない人の典型的な思考です。

自己啓発でよく言われていることを思い出してください。

成功が得られるのは、こちらが何かしらアクションを起こした
「あと」ですよね?

だとすれば、当然、大金持ちの生活が手に入るのも何かしらの
アクションを起こした「あと」ということになります。

要するに今の平凡な生活を「さき」に手放すからこそ、その代償を
「さき」に差し出すからこそ、大金持ちの生活が手に入りうるのだ
ということです。

 

ただ早とちりしてはいけないのは、どのタイミングで代償を
差し出すかは、こちらの判断に委ねられているということです。

今代償を差し出しても成功しないだろうけど、今から準備を進めて
3年後ぐらいに差し出せば成功するかもしれない。

そういうことは考える必要があります。

どれぐらい差し出すか、例えば10あるうちの1を差し出すか、
それとも一気に10差し出すかというのも、その人の匙加減です。

今の生活を手放すとは言っても、いきなりすべてを手放す必要は
ないワケです。

そう考えれば、ナポレオン・ヒルも無茶苦茶なことを言っている
ワケではないということが分かると思います。

彼が言っているのは単に

「(先に)代償を差し出した分だけしか報酬は手に入らない」

ということなのです。

 

代償とは、あなたの今の人生に関わることすべてです。

仕事や人間関係はもちろん、時間の使い方、日々考えていること、
日課、食生活、住んでいる場所、持っているモノなどなど、
人生に関わることは何であれ代償になります。

その点で言えば、断捨離も報酬を得る1つの方法です。

代償の大きさは自分にとってそれがどれほど大切かで決まります。

ですから「これだけは手放したくない」と思っているモノほど
手放す価値があると思ってください。

今時の人だったらスマホを手放せば効果は絶大だと思います、
まあ出来ないでしょうけど。

出来ないということは、それだけ今の(成功できない)生活に
自分が依存しているということです。

もっと言うと、何かに依存して生きているということは、
その何かに縛られて生きているということであり、それは結局
それだけ不自由な生活をしているということなのです。

スマホがないと生きていけない。

素朴に考えて、こんなしょーもない人間が成功するはずがない
ですよね?

ここで言っているのは、そういう当たり前のことです。

成功者は何を差し出しても平気だから成功者なのだということを
覚えておいてください。

 

いつだって成功の法則はシンプルです。

キツイことを自分に課せば、その分だけ報酬が得られる。

今回の話もその程度のことです。

普通に生きてたら、大切なものを捨てたりなんてしませんよね?

でもそれは成功する行動ではなく「普通の行動」なんです。

キツイ方ではなく楽な方を選らんでるんです。

だから成功しないんだ、というただそれだけの話なんだけれども、
なかなか分かってもらえないんだなー、これが。

成功したいなら、成功者の器になりたいならキツイ方を選ばないと。

個人的にはこの「キツイ方を選ぶ」というのが最強の成功法則だと
思います。

できる範囲でいいので、やっていってくださいな。

ありがとうございました。

杉野

 

追伸1:参照ページ。

冒頭で引用したナポレオン・ヒルプログラムのページはこちら。

http://www.n-hill.com/knowhow/g01.html

 

追伸2:ブログ。

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【第15号】猫が教える成功哲学 ニャポレオン・ヒルの秘密(5) 

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ども、杉野です。

いやー、もう12月ですよ。

これが『ここヒル』では今年最後の記事になるかもしれませんので、
来年までにしっかりとレオン様の格言を復習しておくように(笑)

今回は新キャラ登場の予感・・・です(笑)

 

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第15号 猫が教える成功哲学 ニャポレオン・ヒルの秘密(5)

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・・・10日目・・・

いつもの瞑想の前に、レオン様が鉄平に話しかけた。

「瞑想をはじめてから、もう一週間以上になるな」

「え、もうそんなに経つっけ?」

「あぁ」

「少しは慣れてきたか?」

「うん、前よりは集中できるようになってきたと思う」

「そうか」

「では今日から少しメニューを変えることにする」

「どう変えるの?」

「今までは30分3セットだったものを今日からは
1時間2セットにする」

「えぇー、時間増えてんじゃん」

「少し朝食の時間は遅れるが、我慢してやろう」

「え、そっち?」

「我慢するのは俺の方だって」

「いつも私がどれだけ朝食を楽しみにしていると思っておるのだ」

「それを我慢して、お前のことを優先してやるのだから、少しは
感謝せぬか!」

「はいはい、わかったよ」

「やりゃーいいんでしょ、やりゃー」

「では始めるぞ」

 

・・・朝食・・・

 

「よし、終わったな」

「はやく飯を持ってこい、鉄平!」

「もう腹が減りすぎて背中になりそうだ」

「意味が分からん」

「今用意するから、とりあえずそのヨダレをどうにかしなさい」

「う、うむ」

鉄平が朝食の準備をしながら話しかける。

「昨日は息抜きでよかったかもしれないけど、今日はこれから
どうしたらいいの?」

「昨日も言ったであろうが」

「へ?」

「自分で考えるのだ」

「それが出来るなら、こんなこと聞かないって」

「そうだろうな」

「いやいや、おちょくらないでよ」

「おちょくってなどおらぬ」

「そもそもお前の考えは浅すぎると言っておるのだ」

「お前はたかだか一週間のブレインダンプをしただけで、
すべてが上手くいくと思っていたのではないか?」

「だってレオン様は、やりたいことが見つかれば、あとはそれを
やるだけだ、って言ったじゃん」

「あぁ、確かにそう言った」

「しかしな、鉄平」

「お前はその私の言葉を、非常に浅い意味でしか理解して
おらぬのだ」

「どういうことさ」

「お前は以前『みんなが笑顔で、貧困がなくて、不安もなくて、
誰もがやりたいことをやって暮らしている世界』が自分の目指す
楽しい世界だと言ったな」

「それが?」

「そうつっかからずに、よく聞け」

「お前はあれから『みんなが笑顔で、貧困がなくて、不安もなくて、
誰もがやりたいことをやって暮らしている世界』を作るには
どうすればいいか考えたか?」

「そもそも誰を笑顔にしたいのか、何によって貧困を無くすのか、
誰もがやりたいことをやって暮らしていくにはどうすればいいのか」

「そういうことを考えたか?」

「・・・考えてない」

「そういうことだ」

「お前はもっと、お前自身が何を考えているのかを知らなければ
ならない」

「お前はまだまだ自分のことを知らなすぎるのだ」

「言ってることがよく分からないよ」

「要するに俺はどうすればいいのさ」

「だからその問いを自分自身に向けろと言っておるだろ」

「私が毎回お前にやるべきことを教えるのは容易なことだが、
私がいなくなったときにお前はどうするつもりなのだ」

「それは・・・」

「難しいのは分かっておる」

「分かっておるが、これはホンモノになるためには避けては
通れぬ道なのだ」

「朝食が終わったら少しだけヒントをやる」

「そこからは自分でやってみろ」

「うん・・・」

 

・・・朝食後・・・

 

「ぷはー、極楽じゃー」

「さっき言ってたヒントってなんなの?」

「気の早いやつだな」

「もっと余裕をもて、余裕を」

「だって俺にはあんまり時間が」

「そうやって焦っても何もよいことはないぞ」

「そうかもしれないけど、次に何をすれば分からない状態で
焦らずにいる方が難しいよ」

「予定ではもっとサクサク上手くいくはずだったのに・・・」

鉄平はうなだれている。

「わかった、わかった、今から話してやるから頭をあげよ」

「うん」

「まず今のお前は、何を考えればいいのかすら分からない状態だ」

「この点は認めるな?」

「うん、認める」

「こういう場合、取りうる手段は私の知るかぎり1つしかない」

「それは、分かるところまで戻って考える、ということだ」

「どういうこと?」

「今お前に分かっていることは『みんなが笑顔で、貧困がなくて、
不安もなくて、誰もがやりたいことをやって暮らしている世界』を
作りたい、ということだ」

「だから一旦そこまで考えを戻して、その分かっていることを
より深く掘り下げていく」

「これで大体何を考えればいいかは見当がつくはずだ」

「自分の分かっていることに対して、細かく(厳密に)5W1Hの
問いを立てれば、進むべき道は見えてくる」

「もう少し具体的に言うと、笑顔とは何か、どうすれば笑顔になるか、
貧困とは何か、なぜ貧困をなくすのか、どうすれば貧困を無くせるのか、
不安とは何か、どうすれば不安を無くせるのか、他者の不安を
なくすために必要な能力とは何か、などなどを考える」

「立てられる問いを取り敢えず立てておいて、必要なさそうなやつは
あとから消していけばよい」

「これでヒントは終わりだ」

「うーん・・・」

「どうした?」

「言いたいことは分かったけど、ホントにこんなので大丈夫なのかなぁ、
と思って」

「相変わらず失礼なヤツだな」

「あ、ごめん、別に疑ってるワケじゃないんだけどさ」

「そんなことはやっていけば分かる」

「やりもしないうちから悩んでも何も始まらぬであろう」

「それもそうだね」

「じゃあちょっと考え直してみるよ」

 

・・・昼食・・・

 

「調子はどうだ?何か分かってきたか?」

「うーん、まだモヤモヤしてる」

「まあそれも仕方あるまい」

「ほとんどの人間は日頃からこのような訓練をしておらぬからな」

「ってことはレオン様はやってるの?」

「あぁ、昔は散々やらされたぞ、師匠が厳しくてなぁ」

「師匠?」

「初耳だよ、レオン様に師匠がいたなんて」

「そうだったか?」

「うんうん」

「レオン様の師匠ってどんな人、いや、どんな猫なの?」

「聞いてくれるな」

「あの方はもうこの世には・・・」

「ごめん、そんなつもりじゃ・・・」

「『猫もまっさお』以上にうまい猫缶はないと言っておった」

「何の話だよ!」

「たしかに私もあの猫缶よりうまいものには、今にいたるまで
出合ったことがない」

「だから誰もそんなこと聞いてないってば!」

「食いものの話ではなかったのか?」

「どこをどう聞き間違えれば猫缶の話になるんだよ」

「すまぬ、すまぬ」

「で、何の話だ?」

「レオン様の師匠の話だよ」

「そうだったか」

「その話は・・・また今度にしよう・・・」

「え、あ、うん、わかった・・・(なんか俺、マズイこと
聞いちゃったのかな)」

 

・・・昼食後・・・

 

鉄平は昼食後もずっと自分のことについて考え続けた。

世界を楽しくするとは、どういうことなのか。

世界を楽しくするのには何が必要で、何を最初にやらなければ
ならないのか。

今の自分には何ができるのか。

周りは何を望んでいるのか。

周りとは具体的には誰のことなのか。

そういったことを考えるにつれ、鉄平にはあることが明確に
見えるようになってきた。

それは「自分一人で考えて導き出せる答えには限界がある」
ということである。

頭の中で自分の理想を具体化するのは簡単なことだ。

しかし、その理想を周りも同じように理想に思っているとは
かぎらない。

自分がよかれと思っていたことも、実際にやってみたら
ただのお節介にしかならないかもしれない。

考えれば考えるほど、鉄平には自分一人の限界がくっきりと
見えてきたのだ。

そこで彼は、そのことをレオン様に相談することにした。

 

「レオン様、ちょっといい?」

「なんだ、もう飯か」

「違うってば」

「どうした」

「相談したいことがあるんだけど」

「話してみよ」

「さっきのヒントを元にいろいろ考えてみたんだけど、自分一人で
考えててもどうにもならないことがあるってことに気付いたんだよ」

「ほぉ」

「自分のやりたいことは明確になってきたんだけどさ、
そのやりたいことが果たして他の人の望んでいるものを生むのか、
っていうのが分からないんだ」

「なるほどな」

「こういうときって、どうすればいいの?」

「それも本来は自分で考えろと言いたいところだが、そこまで自分で
考えたのなら上出来だ」

「もうなんとなく気付いているとは思うが、その問題を解決するには
お前が救いたいと思う人間とコミュニケーションをとる必要がある」

「やっぱりそうなるのかぁ」

「その通りだ」

「お前は今、やりたいこと、から、やるべきこと、へ足を進めようと
しておる」

「たしかに自分のやりたいことをやって生きていけるのは
素晴らしいことだが、その自分のやりたいことを周りが必要と
していなければ、その願いは叶えられぬ」

「自分のやりたいことと、周りの望むことが結びついて、はじめて
その行為は報われる、ということだ」

「しかし、何が周りの望んでいることなのかは、実際にやりたいことを
やってみなければ分からない」

「つまり、自分のやりたいことを世界に向けて発信し、
そこから得られるフィードバックで周りの望んでいることをつかみ、
自分の進むべき道を探っていくしか方法はないのだ」

「理屈では難しく感じるかもしれぬが、やることはシンプルだ」

「今のお前にできることを世界に発信する」

「それをやってみればよい」

「そうすれば自然と次にやるべきことは分かるはずだ」

「そっかぁ、まだまだ時間がかかりそうだなぁ・・・」

「簡単に誰もがホンモノになれるなら、私の暇つぶしにならぬ
ではないか」

「そりゃそうだ」

「わかった、やってみるよ」

「でも・・・今日はもう夕飯にしちゃおっか」

「鉄平にしては珍しく気が利くな」

「たまには師匠を敬わないとねー」

 

その日の夜、鉄平は布団の中で考えていた。

今の自分にできることとは何なのか。

世界に向けて何を発信すればいいのか。

まだ彼にはそれがよく見えていなかったのだ。

「明日は自分に何ができるかを考えなくちゃなー」

そうして道に迷いながらも、鉄平は着実に前進していくのだった。

つづく。

 

ありがとうございました。

杉野

 

追伸1:イラスト募集。

引き続き、レオン様と鉄平のイラストは募集していますので、
もし気が向いたら

info●philosophia-style.com

まで送ってくださいねー。

 

追伸2:ブログ。

メルマガのバックナンバーはブログに貼っておきます。

復習したい場合はいつでも見に来てくださいませ。

http://kokohiru.philosophia-style.com/

 

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